時の人

岸田政夫氏

岸田政夫01

藍綬褒章を受章

昭和26年卒業
【主な経歴】
生年月日: 昭和6年9月10日(77才) 
卒  業:昭和26年3月 岸和田市立産業高等学校
住  所:
〒464-0832 名古屋市干種区山添町2-60
勤務先:
〒460-0003 名古屋市中区錦3丁目15番31号
平野興産株式会社 代表取締役
株式会社 廣潤社 代表取締役
TEL:052-961-3351
FAX:052-961-3352

保護司として

平成二十年春の褒章に際し、更生保護功労により藍綬褒章を受章しました。
去る五月十六日には皇居に参内し、天皇陛下に拝謁してお言葉を賜るという栄誉に浴しました。
感激の極みで生涯忘れることのできない緊張した一日でした。
また、私の一人おいて左隣に、緑綬褒章を受章されたのを機に、法務省から、「特別矯正監」を委嘱されました俳優の杉 良太郎さんと同席、喜びを共に声を掛けあいました。
私は、昭和五十九年保護司として法務大臣から委嘱を受け、犯罪や非行をした人の立ち直りを地域で支え、今日まで言い尽せないほど、多くの事例を経験しながら対象者から多くのものを教えられたというのが実感でございます。
会社勤めと更生保護活動の両立は時間的に難しく何度も辞めるべきか悩みましたが、ご縁を頂いた先輩のご指導、ご協力や、家族の支えによって今日まで続けることができました。
保護司は全国で約五万人の方々がボランティア活動をしています。
社会奉仕の精神をもち、保護観察官と共に、犯罪や非行をした人に実社会で生活をしながら、決められた約束事を守るよう指導や助言し、その立ち直りを促進しようとする制度を総称して「保護観察」と呼び、その保護観察の実施を担うなど、犯罪者の更生保護と地域における犯罪予防活動の推進の両面において重要な役割を果たしています。
最近では犯罪被害者の支援についてもその期待される声があり、また本年度から薬物犯罪の再犯防止策が導入されるなど、保護司に対する社会の期待はますます高まっています。
現在、全国の刑事施設(刑務所・少年刑務所・拘置所)が約一九0ヶ所、収容定員は、約七万人のところ、最近の少年による凶悪事件や、再犯率の増加傾向のため収容者増で定員に対する収容率は一一五%余の過剰収容状態で罪の償いをしているのが実情です。
この現状は、やはり人間関係の希薄化や、社会のモラルの低下であり、安心で安全な暮らしを送ることができる地域社会実現は、すべての人々の願いです。
私の、保護司としての定年退任予定日は、本年十一月二十四日です。
今後は、この栄誉に恥じることのないよう私なりに一層努力精進を致しますと共に、体力の続く限り少しでも、社会のお役に立てるよう日々を送りたいと考えて居ります。
ここで、お許しいただいて「ケース体験」を披露します。
 

やりきれない深い心の傷

平成十六年秋、資金融資詐欺事件の被害者A氏の被害弁償状況や被害者感情調査等の担当ケースから。
犯罪被害に遭遇することにより悲惨な体験をされ、やりきれない深い心の傷を負ったA氏は、騙され続けたことによる人間や社会に対する不信感が強く、世間から孤立して苦しんでいました。
また、当初は、小職を加害者側の人間と思われ、会うことも困難で普通に話すことも出来ない状態でした。
一般に私たち保護司の業務は加害者の更生の援助と認識されています。
被害者A氏にとって保護司は加害者側の人間と思われ、敵視され、「知らない人にはどうせ分かってもらえない」、「分かってもらおうとは思わない」、「誰にも話さない」という感覚で、その不信感の払拭に時間がかかり、よき話し相手としての信頼を得るのに一苦労がありました。
事件後、A氏には何の補償も無く、どこの保護も受けられず、加害者が無資力では被害弁償も困難で、裁判費用や時間がかかるばかりで、生活苦に陥ったと民事訴訟の相談まで受け、対応に苦慮しました。
単なる被害者感情調査ではすまなくなりそうで、相談内容によっては保護観察中の加害者に会ったり、担当保護司に会う可能性を感じました。
被害者支援の場合は、刑事処分が出た後の生活相談になると思いますが、そのためには被害者の実害の補填や精神面の回復等のための、弁護士会や医療機関など専門機関の支援体制が必要と思いました。
私としては、保護司ができることとして、謝罪の有無やその方法など、A氏のありのままの感情を聴取することにより、加害者に対する憎しみ、敵意のような感情を少しは緩和できたのではないかと思います。
被害者の感情調査を実施することにより、加害者に対する感情の変化等の調査を可能な限り行うことが被害者のためにも必要ではないかと思います。
おわりに、この紙面を通して同窓会の皆さまに、お話しさせていただく機会が得られましたことに、心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。
同窓会報編集担当の皆さんご苦労さまです。
 

『綴じ直す 古き履歴書 喜寿の春』